従業員からもクライアントからも“選ばれる”就業先になるために〈ヘアメイクアップアーティスト採用〉

事業を展開し、企業が成長していくためには、優秀な従業員を確保し、長期にわたり定着してもらうことが不可欠となります。
特にヘアメイクアップアーティストのような専門職では、クライアントから信頼され、選ばれる存在であることが重要です。そのためには、技術力やセンスが優れたヘアメイクさんを雇用することが求められます。

この記事では、クライアントに選ばれるヘアメイクさんを確保するために、企業がとるべき具体的な対策について詳しく解説します。従業員からもクライアントからも“選ばれる”就業先を目指していきましょう。

クライアントに選ばれるためにふさわしいヘアメイクさんを確保する

クライアントに選ばれるためには、信頼されるヘアメイクアップアーティスト(以下、ヘアメイクさんという)の確保が不可欠です。

ヘアメイクの仕事は、ただ見た目を整えるだけでなく、クライアントの要望に応え、期待を超える結果を提供することが求められます。そのためには、技術力やセンスが優れ、チームでの協調性も兼ね備えた人材を採用することが重要です。
適切な人材を見極め、長期的に良好な関係を構築することが、クライアントからの信頼を築くことにもつながるでしょう。

働き手はどのように「働きたい会社や現場」を決めているのか?

働き手が「働きたい会社や現場」と感じるのは、職場環境や待遇、成長機会があるかどうかが大きな影響を与えます。

特に新卒者は、学びの場やサポート体制が整った環境を重視する傾向があります。一方で、転職者は、これまでの経験やスキルがいかせる場を求める傾向があるでしょう。いずれにしても、安定した収入やワークライフバランスの実現が重要なポイントとなります。

さらに、ヘアメイクさんの場合、技術の向上が期待できる現場や、自由な発想がいかせるクリエイティブな環境に魅力を感じるでしょう。雇い主は、働き手のニーズを理解し、それに応える職場を提供することで、優秀な人材を引きつけ、長期定着につなげることが大切です。

満足な給与が得られること

働き手が職場を選ぶ際、最も重要視される要素のひとつが給与です。
安定した収入とキャリアの成長が見込める職場は、優秀な人材を引き寄せ、長期的な定着を促します
特にヘアメイクさんのような技術職では、新人時代の給与は低めに設定されることが一般的ですが、将来的にどの程度の収入が得られるかが大きな決め手となります。満足な給与を得られること、給与の内訳に納得していること、そして、将来的な昇給の見込みがあるかどうかが、職場選びや長期定着において非常に重要です。

自分の得意な分野や興味のある分野にチャレンジできること

人間にとって、仕事に対してやりがいを感じることは、給与と同じくらい大切です。
特に、技術職であるヘアメイクさんにとって、自分の得意分野や興味のある分野にチャレンジしたり、スキルアップすることは大きなモチベーションとなるでしょう。

例えば、特定のスタイルやテクニックを磨く機会があるか、新しいトレンドに挑戦できる環境かどうかが、職場選びの重要なポイントです。これらの機会が提供されることで、従業員は仕事に対する満足感を高めたり、長期的に貢献しようという意欲につながるでしょう。

働きやすい環境であること

どのような職種においても、働きやすい環境であることは非常に重要です。
特に、ヘアメイクさんのようにチームワークが求められる職種は、良好な人間関係かきずける環境であるかどうかが重要視されるでしょう。さらに、有給休暇がとりやすかったり、研修やフォローアップ体制などが整っていることが、職場を選ぶ際の大きな決め手となるといっても過言ではありません。
こうした環境が整っている職場であれば、従業員は安心して就労でき、会社への貢献意欲も高まるでしょう。また、これにより従業員の定着率が向上し、職場全体のパフォーマンス向上が期待されます。
ここからは、ヘアメイクさんに働きたいと思ってもらえる環境づくりについて解説します。

優秀なヘアメイクさんから「選ばれる就業先」になるために

人材不足が続く中、優秀な人材を採用し、定着させることは、企業にとって社をあげて取り組むべき課題といえるでしょう。

ヘアメイクさんにとって「選ばれる就業先」になるためには、従業員が働きやすい環境を整えることが必要です。企業は、安定した給与や充実した手当、キャリアアップの機会など、ヘアメイクさんにとって魅力的な条件を提供することが求められます。

また、長期的な人材育成プランや、健康管理を重視した制度も導入し、従業員が安心して働ける職場づくりを目指しましょう。こうした取り組みは、企業のブランド力向上にもつながり、クライアントからも選ばれる存在となります。

給料が安定している

安定した収入は、従業員が安心して働くための基本です。
特にヘアメイクさんのような技術職では、経験やスキルに応じた適正な給与が求められます。例えば、月給制やボーナス制度を導入し、固定的な収入を保証することで、従業員に安心感を提供するなどの工夫をしてみましょう。また、給与の透明性を確保し、昇給の条件やタイミングを明確にすることも重要です。これにより、従業員のモチベーションが向上し、長期的な定着を促せるでしょう。

各種手当がある

従業員にとって、給与に加えて各種手当の充実も大きな魅力です。
交通費や資格手当、住宅手当など、生活を支えるための手当があることで、従業員の働きやすさが向上します。特に、技術職であるヘアメイクさんにとって、資格やスキルの向上に対するインセンティブがあることは、さらなるモチベーションとなるでしょう。
フリーランスの場合は、交通費や道具代が含まれることを考慮して金額設定します。これにより、従業員の成長を促し、企業全体の技術力向上にもつながるでしょう。

ヘアメイクさんに該当する手当一例

【入社前から取得している資格に対しての手当】
ヘアメイクさんであれば美容師資格や美容にまつわる各種検定資格など

【入社後に取得した資格に対しての手当】
業務に必要、または関連する資格の取得サポート手当(教材の購入・講習会費・試験代など)

【合格お祝い金】
資格の取得サポート手当とは別に、合格した際に支給する

人材育成のための研修がある

人材育成は、事業をすすめていくのための手段であり、その目的は、育てた人材が自社の事業に貢献してくれることにあります。そして、優秀な人材を育成するためには、継続的な研修が必要です。企業は新人研修やスキルアップ研修を定期的に実施し、従業員の成長をサポートしましょう。

また、個々のキャリア段階に応じた育成プランを提供することで、従業員の技術力向上を促します。
例えば、特に新卒生に対しては、「社会人としての心構え」や「ポータブルスキル」を伝えることで、その後労使ともに働きやすくなるでしょう。フリーランスの場合は、自社のルールを共有する研修の実施をおすすめします。
このように育成サポートをしっかりとおこなうことにより、従業員は自身のスキルを磨き、企業に貢献する意欲が高まります。長期的には、企業全体のパフォーマンス向上にもつながりるでしょう。

以下の記事では、人材育成の大切なポイントについて解説しています。

福利厚生が充実している

福利厚生の充実は、従業員の働きやすさや企業への満足度に大きく影響します。
企業が提供する福利厚生には、健康保険・年金制度・定期健康診断・食事補助・社員割引・リフレッシュ休暇などがあります。これらを充実させることにより、従業員は生活面でのサポートを受けながら、安心して仕事に取り組めるでしょう。
特に、ヘアメイクさんには、業務中に使用する道具の補助や、健康を維持するための定期健康診断が効果的です。これらの福利厚生を整えることで、従業員の長期的なキャリア支援が可能になり、企業への「貢献したい」という気持ちも高まります。ただし、福利厚生には企業が負担する費用も多いため、適切なバランスを保つことが大切です。企業にとっても、従業員にとっても、役立ち、そして長期的に継続できるものを選びましょう。

各種休暇をとりやすくする

企業は、個々の従業員におけるプライベートの充実は、仕事の質にも良い影響を与えるという意識を持つことが大切です。
特に、従業員が休暇をとりやすい環境を整えることは、ワークライフバランスの向上に直結します。例えば、有給休暇・産前産後休暇・育児休暇などの制度を整備したり、従業員が安心して休暇を取得できるような環境づくりを心がけましょう。特にサービス業であるヘアメイク業界では、繁忙期があることは避けられません。その場合は、繁忙期以外で休暇がとりやすい仕組みを導入するなど、工夫をしてみましょう。柔軟な勤務体系を取り入れることで、従業員は心身のリフレッシュができ、生産性が向上します。

参考:厚生労働省「仕事と生活の調和」「仕事と生活の調和の実現に向けた取組の推進

「ウェルビーイング」の考え方を取り入れる

ウェルビーイング(well-being)とは、個人や集団の健康・幸福・充実感などが総合的に満足している状態を指します。
現代の企業において、従業員が健康で幸せに働ける環境を整えることや、従業員の満足度や生産性を向上させるために、ウェルビーイングの考え方を導入することは非常に重要です。
具体的には、職場のストレスを軽減する施策や、メンタルヘルスケアの充実、柔軟な勤務体制の導入などがあげられます。また、定期的なフィードバックやキャリア開発の支援を通じて、従業員が自己実現を果たし、会社と共に成長できるような環境を提供することも大切です。

このように、ウェルビーイングを重視する企業文化は、従業員のモチベーションや定着率の向上に貢献し、結果的にクライアントからも選ばれる企業へと成長する助けとなるでしょう。

ストレスチェック制度について

ストレスチェック制度は、日本の労働安全衛生法に基づき、2015年から導入された制度です。
この制度は、労働者のメンタルヘルスを守るために、従業員の心理的な負担をチェックし、ストレスを軽減するための措置を講じることを目的としています。主に従業員50人以上の事業所に義務付けられており、毎年1回のストレスチェックを実施し、その結果をもとに必要に応じて対応をおこないます。
例えば、職場環境の改善や、個々のストレス要因に対する対策はもちろん、専門的なカウンセリングや医療支援を提供してメンタルヘルス不調を未然に防ぐこともこの制度のひとつです。
このように、働きやすい職場づくりを心がけることで、従業員の安心感や生産性の向上を目指します。

参考:厚生労働省
ストレスチェック制度に関する法令
ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等

ハラスメントをなくす〈パワハラやLGBTQなど〉

ハラスメントとは、相手に対して精神的、身体的、社会的に不利益や不快感を与える行為や言動を指します。
特に権力を利用した嫌がらせである「パワーハラスメント」や性的嫌がらせである「セクシュアルハラスメント」は、職場や学校など、公共の場で発生しやすく、主に権力や立場を利用しておこなわれることが多いです。
また、近年ではLGBTQに対する差別や偏見も問題視されており、これらに対する適切な対応が求められています。

「パワハラ6類型」とは

大企業においては、職場におけるパワーハラスメント対策が令和1年6月1日から義務となりました。

令和元年6月5日に女性の職業生活における活躍の推進等に関する法律等の一部を改正する法律が公布され、労働施策総合推進法、男女雇用機会均等法及び育児・介護休業法が改正されました(令和2年6月1日施行)。
本改正により、職場におけるパワーハラスメント防止のために、雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務となります。

厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)」より

  1. 精神的な攻撃
    言葉や態度で精神的なダメージを与える行為など(例: 侮辱や無視)
  2. 身体的な攻撃
    身体的な暴力や暴力的な行為など
  3. 過大な要求
    実行不可能な仕事を押し付けるなど
  4. 過小な要求
    能力が発揮できない仕事を割り当てるなど
  5. 人間関係からの切り離し
    特定の人物をチームから孤立させるなど
  6. 個の侵害
    プライバシーを侵害する行為など(例: 個人的な情報を無断で開示する)

参考:厚生労働省「職場におけるハラスメント関係指針

上記は一例であり、これ以外のことも、パワハラに該当することがあります。
ハラスメントは、現代の職場環境において極めて重要な課題となっており、ハラスメント対策は、職場の安全と安心を確保するために欠かせません。
職場で発生する可能性があるハラスメントは、主に、「パワーハラスメント(パワハラ)」「セクシュアルハラスメント(セクハラ)」「マタニティハラスメント(マタハラ)」があげられ、これらは、 従業員の心身に影響を及ぼす3大ハラスメントとも呼ばれています

その他にも、LGBTQへの差別など、あらゆる形態のハラスメントを防止するために、社内規定や教育を徹底しましょう。例えば、ハラスメント防止のための研修を実施し、従業員が気軽に相談できる窓口を設けることが重要です。

特にヘアメイクアップアーティストの職場では、チームワークが重視されるため、風通しの良い職場環境づくりが重要です。

企業全体でハラスメントゼロを目指して取り組み、従業員の信頼と安心感を高め、長期的な定着にもつなげましょう。

ハラスメントの種類

ハラスメントは、3大ハラスメントだけではありません。
どのようなものがハラスメントに該当するのかを、あらためて確認しておきましょう。

パワーハラスメント(パワハラ)上司や同僚が、権力を乱用して相手に精神的・身体的な苦痛を与える行為。
セクシュアルハラスメント(セクハラ)性的な言動や行為で、相手に不快感や屈辱を与えること。
モラルハラスメント(モラハラ)
精神的な虐待や人格否定、無視など、精神的に追い詰める行為。
ジェンダーハラスメント性別やジェンダーに関する偏見に基づいて、差別的な言動をすること。
マタニティハラスメント(マタハラ)
妊娠・出産を理由に、職場で不利益な扱いや嫌がらせを受けること。
LGBTQハラスメント
性的指向や性自認に関する偏見に基づく差別や嫌がらせ。
アカデミックハラスメント(アカハラ)
教育や研究の場での権力関係を利用した嫌がらせや不当な扱い。
エイジハラスメント
年齢を理由に差別的な発言や扱いを受けること。
レリジャスハラスメント
宗教や信仰などを理由にした差別や嫌がらせ。
スメルハラスメント香水・タバコ・体臭などの匂いで周りに不快な思いをさせてしまうこと。
リモートハラスメントリモートワーク中におこなわれるパワハラやセクハラのこと。

参考:厚生労働省「パワハラ6類型」「職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)

LGBTQとは

LGBTQとは、レズビアン(L)、ゲイ(G)、バイセクシュアル(B)、トランスジェンダー(T)、クィア/クエスチョニング(Q)を指す頭文字で、性的指向や性自認が多様な人々を包括的に表現する言葉です。
LGBTQコミュニティは、これらの多様性に対する理解や受容を求める活動をしたり、多様な背景を持つ個人が、自分らしく生きるための支援や啓発活動も展開しています。

LGBTQは、職場に該当する人がいなければ、特別なハラスメント対策はいらないというわけではありません
LGBTQ施策は、特定の人々を特別扱いするものではなく、全ての従業員が自分らしく力を発揮できる職場づくりを目指すものです。「正しく理解すること」からはじめ、ひとりひとりが十分に力を発揮できる環境づくりを心がけることが大切です。

女性の働きやすさを推進

ヘアメイク業界では、女性が多く活躍しているため、女性従業員が働きやすい環境を整えることが重要です。
産休・育休制度の整備や、復職後のサポート、育児や介護との両立を支援するための柔軟な働き方の導入など、女性に寄り添った施策を実施しましょう。また、女性リーダーの育成や、フェムテック導入による健康管理支援など、女性のキャリアアップを支援する取り組みも必要です。これにより、女性従業員の定着率向上が期待できます。
令和に入り、女性活躍推進法が改正されるなどの動きからも、女性が働きやすい環境の整備が企業にとっての重要課題となっていることが伺えます。結婚・妊娠・出産・子育て・介護など、人生のステージの変化とともに女性が仕事もプライベートもいきいきと活動できるように、女性が安心して長く働ける職場づくりをすすめていきましょう。

参考:厚生労働省 岡山労働局「女性活躍推進法
厚生労働省「女性活躍推進法特集ページ(えるぼし認定・プラチナえるぼし認定)

フェムテックとは

フェムテック(Femtech)とは、女性の健康に特化したテクノロジーや製品、サービスを指します。これは、「フェミニン」(女性)と「テクノロジー」(技術)の組み合わせから生まれた言葉です。フェムテックの分野には、生理管理アプリ、不妊治療、妊娠ケア、女性のヘルスケア製品などが含まれ、女性の健康課題に対する技術的な解決策の提供を目的としており、女性の生活の質向上に寄与する新しい産業分野として注目されています。

SDGs

SDGs(持続可能な開発目標)とは、国連が提唱する「2030年までに達成すべき17の目標」です
企業にとってSDGsへの取り組みは、環境保護や社会貢献を実践することを通じて、社会的責任を果たす重要な方法という認識が広がっています。これにより、企業のブランドイメージが向上し、従業員のモチベーションや定着率の向上にも寄与するでしょう。
具体的には、エネルギー効率の改善やリサイクル素材の活用、地域社会への貢献活動などがあげられます。SDGsに積極的に取り組むことで、クライアントや社会から信頼される企業としての地位を確立し、持続可能な成長を実現することにつながるとして、今後さらにその重要性はましていくことが予想されています。

自社の強みを見つける

採用活動において、自社の強みを見つけ、それを効果的にアピールすることは非常に重要です。
ヘアメイクさんに求人応募してもらうため、他社との差別化を図るためには、自社の魅力を明確に伝えることが求められます
例えば、これまでにご説明した働きやすい環境づくり、充実した研修制度、最新の設備を備えた職場、社内の良好な人間関係などが強みとしてあげられます。人材採用競争が激しい業界においても、これらを採用活動で積極的にアピールすることで、求職者に「選ばれる」企業となれるでしょう。
自社の強みを見つけるときは、企業側の視点だけで考えるのではなく、現在の従業員の意見を取り入れることも重要です。過去の実績や現在の状況を振り返り、これからどのように発展していくのかを考えることが、企業全体の成長にもつながります。

以下の3STEPで考えてもらってみましょう。

  1. 「過去」の強み

入社前と入社後、一年前と現在など

  1. 「今」の強み
    今現在、どのような強みがあるか、過去と比べてどう変わったか
  2. 「これから」の強み

過去や今を基準として、これから将来どのように変わりたいか

時間が経つとその瞬間の気持や気付きを忘れてしまうこともあるので、時期を決めて、ビジョンマップに書き残しておくのもおすすめです。一定期間ごとの目標を1枚のシートなどにまとめておくことで、従業員自身が過去の自分を振り返ることもできますし、企業としても個々人の考え方や成長に触れることができます。

特に、ヘアメイクのようなスキルアップが求められる職種では、定期的な振り返りが自身の成長を感じさせ、それが企業の業績向上に直結するでしょう。こうしたプロセスを通じて得られた実績を、新たに迎える人材に共有することで、彼らが自分の成長を期待し、具体的な目標を持って働ける環境づくりにつながります。

従業員に守ってもらうこと

これまでにご説明したとおり、従業員にとって自由で働きやすい環境を提供することは、企業の成長に欠かせません。
ただし、働くうえで、従業員にも守ってもらうべき就業規則や、コンプライアンスなどの基本的なルールや義務があることもしっかりと伝えましょう
特に、ヘアメイクさんの仕事については、クライアントに対しして、時間厳守、個人情報の取り扱い、業務内容の正確な遂行などを果たすことが求められます。また、従業員同士が安心して働ける環境を維持するためにも、報告義務や、先述したハラスメント防止策の遵守なども徹底することが大切です。
これにより、職場全体の秩序と信頼関係を保ち、クライアントから信頼されるサービスを提供し続けることが可能になるでしょう。

ヘアメイクの仕事で想定される守秘義務とは

どの企業においても、その企業独自の技術や知識、マニュアルなど、他社や一般には知られたくない内容があり、それを漏洩させない「守秘義務」があります。
さらに、ヘアメイクさんの仕事においては、以下のような特別な守秘義務も発生することが想定されるため、就業規則へ反映させるなどして、周知を徹底しましょう。

クライアントのプライバシー保護

ヘアメイクは、クライアントの個人情報やプライバシーに関わる内容を知ることが多い仕事です。
例えば、モデルやタレントのヘアメイクを担当する際、その人のまだ公表されていない仕事や、その人物の肌の状態・体調・個人的な好みなど、プライベートな情報にも触れる機会が頻繁にあります。仕事を通して知り得たこれらの情報を、決して外部に漏らしてはいけません。
また、これらの情報は、芸能人だけに関わらず、一般人が対象であっても守るべき事項です。

ビジネス機密の保護

撮影やイベントで使用されるスタイリングやメイクの技術、商品の選定、ヘアメイク業界だからこそ知り得られるこれからのトレンド情報なども、守秘義務の対象となります。
特に、公開前のプロジェクトに関する情報や新商品の発表に関わる内容は、厳重に管理しなくてはなりません

プロジェクト内容の非公開

 ヘアメイクさんは、映画やテレビ番組、広告キャンペーンなど、まだ公表されていないプロジェクトの情報を知ることがあります。これらの情報を無断で第三者に漏らすことは、守秘義務違反となり、法的責任を問われる可能性があるので厳重に取り扱わなければなりません。

副業について

憲法第22条第1項では「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」と定められており、職業選択の自由が認められています。
そのため、法的な観点からは、副業は違法ではありません

昨今の傾向では、2018年に施行された「働き方改革関連法」により、副業を認める企業が増加しています。
特にヘアメイクさんにとって、副業はスキル向上やネットワーク拡大の手段として有効といえるでしょう。副業を通じて現場経験を積み、新たな技術を習得することが可能です。また、他の仕事やプロジェクトに参加することで、経済的な安定やモチベーションの向上も期待できます。

しかし、副業にはデメリットもあります。
まず、過労や本業への悪影響、情報漏洩リスクの増加することが考えられるでしょう。また、企業が副業を禁止している場合には、法的なリスクも伴います。副業を推進する場合は、これらのリスクを考慮し、適切なルールや管理体制を整えることが重要です。副業のメリットとデメリットを理解し、従業員が本業と副業を両立できる環境づくりをすることが、企業にとっても従業員にとってもプラスとなるでしょう。

【メリット】

スキル向上:副業を通じて新しいスキルや経験を得られる。
経済的安定:収入源が増えることで経済的な安心感が得られる。
モチベーション向上:副業が刺激となり、本業へのモチベーション向上が期待できる。
ネットワーク拡大:副業を通じて人脈を広げることが可能になる。

【デメリット】

過労のリスク:労働時間が長くなり、疲労やストレスが増加する可能性がある。
本業への影響:副業が原因で本業に集中できなくなるリスクがある。
情報漏洩のリスク:本業と副業の両方で情報管理に注意が必要。
法的リスク:副業禁止の規定がある場合、違反するリスクがある。

参考:厚生労働省「憲法22条に規定する職業選択の自由について
厚生労働省愛知労働局「「働き方改革関連法」の概要

副業可とした場合の留意点

副業を認めることにより、従業員のモチベーションやスキル向上が期待できる一方で、副業が本業に影響を与える可能性と、影響が出てしまったときの具体的な対策を講じる必要があります。特に、情報漏洩や労働時間の管理、体調の管理には細心の注意を払いましょう。
これらのリスク管理も忘れずにおこなうことが、企業の成功につながります。

情報漏洩のリスク

情報漏洩のリスクを減らすためには、守秘義務や社内ルールを明確にし、従業員に徹底させることが重要です。

労働時間の管理

労働時間の管理については、労働基準法で定められた「1日8時間、週40時間」の法定労働時間は、副業も含めて適用されます。そのため、従業員の労働時間を正確に把握し、必要に応じて自己申告してもらうなどの対策が必要となるでしょう。

体調の管理

働く時間が増えるということは、体への負担も増えるということです。
副業による疲労が本業に影響を与えないように、健康診断や体調チェックを定期的におこないましょう。

活躍してくれるヘアメイクさんを採用するためには

雇い主として、ヘアメイクさんに求めることは「自身の技術とセンスを持って活躍してくれること」です。優秀なヘアメイクさんと出会うために、ここからご紹介する3つのポイントと7つの記事を参考にしてみてください。

求人媒体にこだわる

この記事でご説明したとおり、ヘアメイクさんを雇いたい場合、求人媒体の選定は重要です。「どんなヘアメイクさんを求めているか」に応じて、適切な求人媒体を選びましょう。

求人のタイミングはいつ?

採用活動には時間がかかります。
求人媒体の選定、面接、入社手続きに加え、戦力として稼働してもらうために研修が必要な場合も想定しておきましょう。

採用の流れ

採用活動をスムーズに進めるためには、事前に採用の流れを把握しておくことが重要です。トラブルを防ぐためにも役立ちます。

【採用までの流れ一例】

求人媒体を探す

募集をかける

書類審査をする

面接をする

採用通知を出す

入社の手続き

求人を出すときに企業が考慮すること

この記事でもご紹介したとおり、ヘアメイクさんを雇用したいときには、以下の3つの注意点を考慮することが重要です。
採用活動や雇用関係を結ぶ前に確認しておきましょう。

自社のために:「どんな人材がほしいのか」を明確にする

まずは企業にとってほしい人材像を明確にしましょう。
例えば、正社員か業務委託か、未経験可か経験重視かを決めるなど、自社が求める人材を明確にすることで、書類審査や面接の選考がしやすくなります。ブレることなくきちんと求める人材を採用することで、現場の仕事がスムーズに進行できるでしょう。

以下の記事では、優秀なヘアメイクを確保するために、採用活動でどのような点に気をつければよいのか、採用のポイントと注意点を解説しています。

従業員のために:勤務条件を明示する

勤務条件は、労働者が就業先を決定する際に非常に重要です。
基本的な給与・勤務地・仕事内容などの条件を明確にし、求人募集時に明記することで、労使で共通の認識を持つことができ、入社後のトラブルや不満を防ぐことにつながるでしょう。

以下の記事では、従業員と自社のために、ヘアメイクさんを採用するときの考慮点や注意点を解説しています。

従業員と自社のために:採用にかかる時間と、採用後の収入(費用)を明示する

新しい人材の採用には費用と時間がかかります。
採用活動前に、企業にかかる負担や支出を明確にし、経営に支障が出ないようにしましょう。例えば、従業員にとっての収入となる「従業員に支払う給与」と、会社が負担する「見えない費用」を明確にしておく必要があります。

以下の記事では、求人から採用までヘアメイクを採用するときの費用を徹底解説しています。
→求人から採用までヘアメイクを採用するときの費用を徹底解説!の記事は現在準備中です。

従業員と自社のために:受け入れ体制、働きやすい環境を整える

この記事でもご紹介したとおり、昨今、会社組織における福利厚生や技術手当、研修やハラスメント対策の体制を整え、充実させることが、一昔前に比べてより強く求められるようになってきました

従業員にとって働きやすい環境を整え、せっかく採用した人材が離れないようにすることが大切です。現場の仕事が円滑に進むように、労働環境づくりに取り組みましょう。

業界や人材に「選ばれる」企業を目指して

優秀なヘアメイクアップアーティストを採用し、長期的に定着させるためには、働きやすい環境づくりが重要です。

給料の安定や各種手当の充実、研修制度の整備など、従業員が安心して働ける環境を提供することで、企業としての魅力が高まります。また、ウェルビーイングやハラスメント防止策の導入も不可欠であり、職場の安全と安心を確保することも忘れてはいけません。さらに、自社の強みを見つけ、アピールすることで、競争が激しい業界でも「選ばれる」企業を目指しましょう。