ヘアメイクアップアーティストを求めている企業必見!採用を成功させる基礎知識と対策

ヘアメイクアップアーティストは、美容室・結婚式場・写真館など多くの現場で非常に需要のある職業です。「優秀なヘアメイクさんを雇いたい!」とお考えの場合、まずは人材を雇用する際の基礎知識を確認しましょう

この記事では、企業がヘアメイクさんを雇用するために知っておきたい雇用時の守るべきルールや整備すべき制度など、重要なポイントをまとめてご紹介しています。また、雇われる側のヘアメイクさんにも参考にしていただける内容ですので、ぜひ最後までお読みください。

ヘアメイクアップアーティストとは?

ヘアメイクアップアーティスト(以下「ヘアメイクさん」という)とは、ヘアスタイリングとメイクアップを施す職業のことで、「ヘアメイクさん」と呼ばれることがあります。

ヘアメイクという仕事は、クライアントのイメージや要望に応えたり、撮影のテーマとモデルの印象を考慮して、目的にあったイメージを作り上げる技術職です。

メイクアップは資格がなくてもできますが、ヘアセットは美容師の資格が必要とされています。

以下の記事では、ヘアメイクさんからみたプロとして活躍するための学び方や仕事の探し方について解説していますので、参考にお読みください。
ヘアメイクアップアーティストになるには?学び方と仕事の探し方

そして、ヘアメイクさんの仕事場は「現場」と呼ばれ、主に芸能向けと一般向けに分かれます

まず、芸能向けの仕事にはTV局・雑誌・広告などの撮影が含まれ、一般向けの仕事には美容室・結婚式場・写真館などが含まれます。これらの現場のようなヘアセットやメイクアップを必要とする場面でヘアメイクさんは欠かせない存在です。

例えば、TV局では出演者に、雑誌や広告の撮影ではモデルにヘアメイクを施します。

一方で、美容室では結婚式の参列や推しのイベントなど、いつもより特別なお出かけをするお客様へのヘアセットやメイクアップをおこないます。結婚式場でおこなうヘアメイクは、挙式のためにドレスアップした新郎新婦にあわせて華やかで洗練されたイメージなのが特徴です。また、写真館では、宣材写真や家族写真など、お客様の目的に合わせたヘアメイクをおこないます。

このように、ヘアメイクさんは、クライアントの要望に応じて柔軟に対応し、プロの技術をもってヘアメイクを施す技術職です。

そのため、髪を扱うことを認められている美容師の資格を持っていることや、メイクアップに関して技術があることが求められ、さらに、センスやクリエイティビティも重要な要素となります。

採用活動を成功させるための対策

採用活動を成功させるためには、どのような業種または職種においても事前準備が必要です。
ヘアメイクさんを雇用したい場合も、適正のある人材をスムーズに採用するための対策をしておきましょう。

ここからは、ヘアメイクさんを雇う際に確認しておきたい5つのポイントをご紹介します。

採用の目的を明確化:人材募集の理由は?

まず、雇用主が人材を募集するときは、必ず理由が伴います。
ヘアメイクさんを求めて採用活動をする際は、「なぜヘアメイクさんが必要なのか」を明確にしておきましょう

【具体例】

  • 既存の事業拡大や業績好調により、増員したい
  • 新規事業でヘアメイクさんが必要になった
  • 欠員が出たので、急遽補充したい


このように、採用の目的を明確化することにより、このあとご紹介する4つのポイントも確認しやすくなります。

求める人材像の明確化:採用したい人物像の決め方と注意点とは

企業・組織・チームなどは、属するメンバーで業務の目的が達成できるか、どのような雰囲気の組織になるのかが決まります。そのため、メンバーとなってくれる人材は非常に重要です。

ヘアメイクさんを求める現場においても、「どんな人を雇うのか」が現場の進行や雰囲気づくりにも関わってきますので、どのような人材を採用したいかを明確化しておきましょう。

採用したい人物像の決め方と注意点は以下のとおりです。

従業員として確認しておきたいこと

・清潔感があること

接客業なので、クライアントに不快感を与えないことは重要です。
特に、美容にかかわる仕事なので大切なポイントとなるでしょう。

・時間を守れること

社会人として重要事項です。
さらに、ヘアメイクはタイトなスケジュールでおこなうものなので、時間厳守となります。

・ルールや機密情報を守れること

芸能関係であれば、現場の写真はもちろん、リリース前の情報漏洩は禁物です。
一般向けに対しても同様に、守秘義務は発生します。ジャンルに関わらず、クライアントの情報やお客様の大切なデータの保管などは厳重におこなう必要があります。

ヘアメイクさんとして確認しておきたいこと

・求める技術とセンスがあること

技術職として、一番大切なのが技術力とセンスです。
また、その技術力とセンスが自社の事業内容にあうかどうかも大切なポイントとなります。可能であれば、これまでの経験数や経験してきた現場の種類を参考に見極めるようにしましょう。

・コミュニケーション力が高いこと

ヘアメイクさんは、クライアントの意向を汲み取ったり、ヘアメイクの対象者の要望を聞きながら仕事をするため、コミュニケーション能力が必須となります。また、ヘアメイクさんの関わる現場は、多くのスタッフと作り上げられるためチームワークが大切です。そのため、多方面で良好な人間関係を築けるコミュニケーション能力が高いことが求められます

・向上心があること

ヘアセットやメイクアップは時代の象徴ともなるもので、常に進化し続けるものです。そのため、ヘアメイクの仕事は、トレンドを取り入れたり、常に技術やセンスをアップデートすることが求められます。

このように、向上心を持って仕事に取り組むヘアメイクさんを採用することで、ヘアメイクのクオリティが向上し、クライアントやお客様からの評価も高まるでしょう。

未経験者を雇うときのポイント

これまで「ヘアメイクさんとして確認しておきたいこと」としてご紹介してきたポイントでは、どれも経験が必要となります。しかしながら、新卒などの未経験者を雇う場合、経験が少なかったり、コミュニケーション力が低い可能性は否めません。

ただし、これらは経験を積みながら養われていくものですので、「どうしても即戦力が欲しい」というわけでなければ、成長を期待して未経験者を採用することも選択肢としておすすめです。未経験であっても、研修を丁寧におこない、自社のやり方やコンセプトを伝えることで、自社のスタイルに馴染んだヘアメイクさんとして活躍できるようになります。

ジャンルの明確化:即戦力と出会えるコツ

ヘアメイクには様々なジャンルがあります。自社に貢献してくれるヘアメイクさんと出会うためには、どのような技術とセンスを持ったヘアメイクさんを探しているか、どのような仕事を任せたいかなど、具体的なジャンルを決めてから求人をかけましょう

そのためには、求人募集時にジャンルを明示することが大切です。求めているヘアメイクさんのジャンルをしっかりと明示することで、その分野で働きたい人や経験を持つ人が応募しやすくなり、企業にとっても即戦力となる人材と出会える可能性が高まります。

【ヘアメイクのジャンル一例】

芸能向けヘアメイク事務所・TV・CM・映画・イベント・ファッションショーなど
一般向け結婚式場・写真館・美容室・美容メーカーなど

以下の記事では、ヘアメイクさんが働く現場のジャンルをくわしく紹介しています。

求人媒体:どこで、どうやって募集と選考をするか

求める人材と効率よく出会える採用活動には、求人媒体の決定や選考方法の選定は欠かせません。特に、求人媒体によって応募者の層が変わるため、企業と媒体、媒体と求職者の相性を考慮することは大切なポイントです。

例えば、経験豊富なヘアメイクさんを雇いたい場合は、経歴を持つ人が多く閲覧する転職サイトを活用しましょう。

反対に、新卒や未経験者を探す場合は、新卒用の就活サイトや専門学校の求人を利用するのがおすすめです。自社が求めている人材と相性のよい求人媒体で募集をかけるようにしましょう。

以下の記事では、ヘアメイクさんを探す求人媒体と選定方法をさらにくわしくご紹介しています。
→(仮)ヘアメイクさんを探す求人媒体の種類と選定方法とは?の記事は現在準備中です。

そして、どのような方法で募集と選考をおこなうのかも重要なポイントとなります。

新卒の場合は、第一次選考として履歴書を確認する書類選考をおこなうのが一般的な求人採用の流れです。一方で、ヘアメイクとしての経歴がある転職希望者の場合は、履歴書とともに過去の作品データを確認し、面接をおこなうのかを判断します。

また、社内の従業員や知人からの紹介であれば、人柄や経歴を知ることができるため、履歴書を持参した面接からスタートすることも多いです。このように、募集方法に合わせて選考方法も変えていきましょう。

以下の記事では、ヘアメイクさんを採用する流れについてさらにくわしくご紹介しています。
→ヘアメイクアップアーティストを採用する流れとは?注意点を徹底解説の記事は現在準備中です。

時期:いつからいつまでに募集するか

求人は、どのようなタイミングで募集するのかが非常に重要です。

例えば、新卒を雇用したい場合は、専門学生が就活を始める秋や年末から卒業シーズンに入るまでが最適な時期といえるでしょう。

また、ヘアメイクさんが必要な現場の日時や会社として人材採用をしたいタイミングが決まっている場合は、その日にちから逆算して採用活動をおこないます

さらに、経歴のある人材との出会いの機会を増やすためには、「通年採用」もおすすめです。とくにフリーランスで活動している人は、技術力やセンスもあり、時期を問わず仕事を探している可能性が高いでしょう。

編集者小泉 愛理

ただし、採用は縁ですので、求めている人材とすぐに出会えるとはかぎりません。そのためにもきちんと計画し、余裕を持って計画的に進めましょう。

以下の記事では、ヘアメイクさんを採用する時期についてくわしくご紹介しています。
→ヘアメイクアップアーティストを採用したい!求人を出すベストなタイミングはいつ?の記事は現在準備中です。

勤務形態と雇用形態の違いとは?契約に関する基本知識

人材を採用するときは、雇用形態と契約に関する基本知識をしっかり把握しておくことが重要です。特に、技術職であるヘアメイクさんは、正社員やフリーランスなど、様々な働きが考えられるため、雇用主は様々な契約方法に対応できるようにしておく必要があります

以下に雇用形態についての基本的な情報をまとめましたので、自社の必要としている現場や陣形費の予算などに合わせて、どのような雇用形態や契約が適しているのかを判断しましょう。

「勤務形態」と「雇用形態」の違いとは

まずは、「勤務形態」と「雇用形態」の違いを確認しておきましょう。

「勤務形態」とは、一般的に、働く時間に関する形態のことを指します。一方、「雇用形態」は、正社員・契約社員・パートタイム・アルバイト・フリーランスなど、企業と従業員の間で結ぶ雇用契約の種類を意味します。ですので、雇用形態を決めたうえで勤務形態が決まるのが一般的です。

ヘアメイクの現場は、それぞれの仕事にかかる時間の目安はあるものの、基本的に不規則な場合が多いといわれています。美容室や写真館のように事前に時間が想定できる場合はある程度の調整が可能ですが、勤務時間が「その現場が終わるまで」とされることもあるでしょう。
ヘアメイクさんと契約をする場合は、業務内容と一緒に雇用形態と勤務形態を確認することで、双方の認識をすり合わせることができ、トラブル防止にもつながります

雇用形態の特徴

人材を採用するときは、どんな人をどの雇用形態で雇うかを決める必要があります。
それぞれの雇用形態により、契約内容や人件費が変わるので、事前にしっかりと確認していきましょう。

【雇用形態と特徴】

雇用形態特徴
正社員・雇用期間を定めず長期に働くことが前提となるため、責任のある仕事を任せられる。
・月給制や年俸制といった固定給となり、企業によってはボーナスなども用意する。
・社会保険への加入など、福利厚生が充実している。
・評価により、昇給や昇格で収入が増える。
契約社員・原則として、契約社員は労働契約の期間に定めがある。
・繁忙期や中期的なイベントなど、一定期間の人員として向いている。
・契約社員でトライアル期間を経て、正社員に登用されることもある。
派遣社員・原則として、派遣社員は労働契約の期間に定めがある。
・派遣社員を雇うことで、採用や教育にかかる初期コストや福利厚生費用を削減できる。
・短期プロジェクトや季節的な業務量の変動に応じて、人員を柔軟に調整できる。
特定のスキルや専門知識を持った派遣社員を即戦力として導入することで、社内の業務効率を高められる。
・自社、派遣会社、従業員の契約内容によっては、将来的に直雇用できることもある。
参考:~ キャリアアップ助成金を活用して優秀な人材を確保 ~
派遣労働者を正社員として直接雇用しませんか
パートタイム・アルバイト・勤務日数や時間を調整できる・学生・子育て中の主婦(夫)・ブランクがある人に適している・パートタイムやアルバイトでトライアル期間を経て、契約社員や正社員に登用されることもある。
フリーランス(スポット)・仲介者なしの直契約なので、雇い主は安く雇用でき、求職者は収入が増える場合が多い・正社員やアルバイトなどと同額の賃金であっても、社会保険などがかからないぶん人件費が安い・ひとつの現場や1案件ごとに契約ができる

例えば、ヘアメイクさんを長期間安定して確保したい場合は、正社員として雇用するのがおすすめです。一方で、一定期間雇いたい場合や、スキルの確認、従業員との相性などを見るためのトライアル期間が欲しい場合は契約社員の契約がよいでしょう。

また、短時間だけ必要としている場合や、雇いたいヘアメイクさんの都合で時間に制限がある場合は、パートタイムやアルバイトの契約が適しています。

さらに、ヘアメイクの現場が1日だけであったり、「このクライアントさんの現場だけ」など、単発で採用したい場合は、フリーランスやスポットで契約するのがよいでしょう。

このように、雇用形態は雇い主のスケジュール・人件費の予算・業務の内容・ヘアメイクさんの希望などを汲み取り、相談したうえで決めるとよいでしょう。

以下の記事では、ヘアメイクさんに働きやすいと思ってもらえる環境づくりについてくわしく解説しています。
→従業員からもクライアントからも“選ばれる”就業先になるためにの記事は現在準備中です。

要確認!時間や期間の制限がある雇用について

昨今、ニュースなどで取り上げられている「有期労働契約は5年を超えると無期労働契約に転換できる」というルールについてご存知ですか?人材を採用する際は、この条件や例外となる場合について理解しておくことが重要です。また、時短勤務とアルバイトの違いについても把握しておきましょう。

労働法を理解し、適切な雇用形態で契約を結ぶことで、ヘアメイクさんに安心して働いてもらうことができ、結果的に現場の進行や事業全体を円滑に進めることができます。

有期期間で雇えるのは5年まで

契約社員・パート・アルバイトなど、時間や機関の制限がある形態で雇用する際は、「有期労働契約」に注意をしましょう。

このルールは、2013年4月1日に改正労働契約法として施行された法律に基づいて定められたもので、「契約社員・パート・アルバイトなど、全ての有期契約で働く人は、契約期間が5年を超えたら「無期転換」できる」という内容になります。

これは、有期契約労働者を5年で無期契約化することで、無期契約社員となる正社員との待遇や業務の差が生まれないようにしたり、雇い主が雇用期間を更新せずに契約を終了させる「雇止め」の解消と改善を目的としています。

また、通算5年となるのは、平成 25 年4月1日施行の労働契約法第 18 条により、平成25 年4月1日以降に開始した有期労働契約が対象です。

この内容は、無期転換ルールとして厚生労働省の「労働契約法第18条に基づくルール(~無期転換ルール~)」に記載されています。

短時間勤務・パート・アルバイトの違いとは

認識を違いやすい「短時間勤務」と、「パート」と「アルバイト」の違いを確認していきましょう。この3つの雇用形態は、どれも短い時間の勤務を指しますが、労働契約形態に大きな違いがあります。

まず、パートとアルバイトは、1週間の所定労働時間が短い労働者で、有期労働契約です。

一方で、短時間勤務の正社員は無期労働契約であり、契約内容は正社員と同じ、もしくは準じています。つまり、短時間勤務は「働く時間が短い」正社員です。

そのため、多くの就業先においては、短時間勤務・パート・アルバイトで責任の度合いや業務に違いがあります。

労働に関する法律「労働法」を把握しておこう

従業員やフリーランスと雇用関係を結ぶときは、国の定めた労働に関する法律を守らなければなりません

きちんと法律を守ることで、経営者は円滑に会社を経営することができ、従業員は安心して仕事に従事することができます。このような体制が整うことで、安定した仕事ができ、クライアントからの信頼も得やすくなるでしょう。

また、労働に関する基本的な法律だけでなく、企業ごとの特色や事業内容に応じた関連法を確認し、ヘアメイクさんを雇用する際のポイントを押さえておきましょう

労働法における「経営者の権利」と「従業員の権利」

まずは、労働に関する国の法律を理解しておきましょう。

雇用主が人材を雇用するときには、職種や業種を問わず、経営者を守る「経営三権」と、労働者を守る「労働三権」を知っておく必要があります。また、企業には「就業規則」を作る義務がありますので、あわせて確認しておきましょう。

「労働三権」とは

労働三権は、労働者が自分たちの労働条件を守り、改善するために有する基本的な権利です。以下の3つの権利が含まれます。

  • 団結権
    労働者が労働組合を結成し、組織として団結する権利のこと。
    労働者は、賃金や労働時間の改善の実現を目的として上記のような運動をおこなう。
  • 団体交渉権
    労働者が団結して使用者と労働条件について交渉する権利のこと。

労働組合が経営者に対して、賃金の引き上げや福利厚生の改善を交渉する。これにより、労働者が交渉力を持たず、賃金や労働条件の改善がなされないことを防ぐ。

  • 団体行動権
    労働者が団結してストライキなどの行動をおこなう権利のこと。

労働者がストライキをおこない、過重労働の是正を求めることで、企業が労働条件の見直しや健全な労働環境が整備されることに繋がる。

「経営三権」とは

経営三権とは、企業などの経営者が労働力を管理したり、運営するための基本的な権利を指します。具体的には以下の3つがあります。

  • 採用権
    新たに従業員を雇用する権利のこと。

企業が新たなプロジェクトを開始したり、事業を発展させるために、必要なスキルを持つ人材を採用することができる。これにより、プロジェクトが遅延したり、または進行できない事態を防ぐ。これにより、プロジェクトの進行がスムーズになり、業績の向上が目指せる。

  • 解雇権
    従業員を解雇する権利のこと。

業務に著しく支障をきたす不適格な従業員を解雇する権利を持つことで、他の従業員の士気が向上し、職場環境が改善される。
ただし、労働法規や雇用契約に基づいて適切におこわなければならない。

  • 指揮命令権
    従業員に対して業務の指示や命令を出す権利のこと。
    企業が新しい業務手順を導入するため、従業員に対して具体的な指示を出すことにより、新しい手順が迅速かつ効果的に実施される。
    この権利により、業務の遂行や職場の秩序を維持することが可能となる。

参考:厚生労働省「労働組合

「就業規則」とは

就業規則とは、雇い主が従業員に対して、職場のルールや労働条件を明示するために定める規定です。これには、労働時間・休暇・賃金・服務規律・懲戒処分などが含まれ、雇い主が労働者を採用するときは、労働条件を書面などで明示しなければなりません

この就業規則は、労働契約の基準を示すものであり、従業員に対する公平な取り扱いを確保し、職場の秩序を維持するために重要な役割を果たします。また、就業規則の内容は雇い主ごとに自由に作成できますが、労働基準法に基づいている必要があります

特に重要な項目が集約されているため、口約束だけではなく、きちんと書面を交付する必要があることが労働基準法第15条で定められているので留意しておきましょう。

日本における労働基準法については、厚生労働省「労働基準法」をご確認ください。

事業ごとの手続き

すでに事業を展開している場合はご存知かとは思いますが、これから新規事業を始める人や初めてヘアメイクさんを雇う場合は、事業所ごとに必要な手続きを確認しておきましょう。

例えば、美容室やサロンを新規開業する際には、保健所への届出が必要です。また、事業や店舗の条件によっては、管理美容師の設置が義務付けられています。これらの手続きを適切におこなうことで、事業運営がスムーズに進みます。

管理美容師とは?

管理美容師とは、美容師が複数いる美容所の衛生管理責任者のことで、美容室やサロンなどの美容所において、衛生管理や従業員の技術管理を担当する美容師です。

各美容所には、管理美容師の設置が法的に義務付けられており、管理美容師は、店舗の衛生基準の遵守、使用器具の消毒、店舗の清潔維持、従業員の管理などに関する責任を負います。

管理美容師になるには、免許取得後3年以上の実務経験が必要で、指定された講習会を修了していることが必須です。

管理理容師・管理美容師資格は、免許を受けた後3年以上業務に従事し、厚生労働大臣の定める基準に従い都道府県知事が指定した講習会の課程を修了した者に付与

• 管理理容師・管理美容師制度は、理容業務・美容業務の技術的管理運営の適正化及び理容・美容施設の衛生的管理の向上並びに理容者の衛生保持のために設けられたもの

厚生労働省「理容師・美容師制度の概要等について

会社のルールを確立すること

大前提として、人材を雇用する場合は、自社の制度やルールを確立し、雇用主や人事担当はその内容を十分に理解しておかなくてはなりません。

基本的に、雇用に関するルールは就業規則となりますが、他にも日々の業務に関するルールやルーティンも確立しておくことで、雇い主、すでにメンバーとして働いている従業員、そしてこれから採用するヘアメイクさんにとって、より働きやすい環境づくりに繋がるでしょう。

以下の記事では、ヘアメイクさんにとって働きやすい環境づくりに関して解説しています。
→従業員からもクライアントからも“選ばれる”就業先になるためにの記事は現在準備中です。

社会保険の整備

社会保険は、政府が運営する「国民の生活を安定させるために設けられている制度」です。企業として従業員を雇用する場合、契約内容によって社会保険への加入が義務付けられています

日本の社会保険には、病気・怪我・老後・失業などのリスクに対する保障をする健康保険・年金保険・雇用保険・介護保険・労災保険の5つがあります。

これらの保険料は企業と従業員が折半して負担することと定められており、従業員が負担する保険料は、月々の給与などから天引きされます。

参考:厚生労働省「社会保険とは何か

社会保険は、正社員や契約社員が加入できるものになりますが、条件によっては派遣社員も加入できます。

また、2022年10月より、段階的に一部のパートやアルバイトの社会保険加入が義務化されました。そのため、雇用形態にかかわらず、以下の全ての条件を満たす従業員は加入対象となります。

【社会保険加入対象者の条件】

  • 企業の従業員人数が、国の定める従業員人数を超えていること

・2022年10月〜:従業員101人以上の企業が対象
・2024年10月〜:従業員51人以上の企業が対象
※従業員:厚生年金保険の被保険者数

  • 週の所定労働時間が20時間以上30時間未満であること

・週所定労働時間が40時間の企業の場合
・契約上の所定労働時間であり、臨時に生じた残業時間は含まない
・契約上20時間に満たない場合でも、実労働時間が2ヶ月連続で週20時間以上となり、今後も続くと見込まれる場合には、3ヶ月目から保険加入とする

  • 所定内賃金が月額8.8万円以上であること
    ・基本給及び諸手当を指す
    ・ただしこの金額には、残業代・賞与・臨時的な賃金等は含まない
  • 2ヶ月を超える雇用の見込みがある
  • 学生ではないこと
    ・休学中や夜間学生は加入対象となる

より詳細の情報は、厚生労働省の「社会保険適応拡大特設サイト」を御覧ください。

参考:厚生労働省「社会保険適応拡大特設サイト

インボイス制度とは

インボイス制度とは、令和5年10月より開始した、複数税率に対応した「仕入税額控除の方式」のことです。

この制度は、主に個人に仕事を依頼する企業や、個人事業主として仕事をしている人に関係しており、雇い主(以下、買い手とする)が、消費税の納税額の計算方法である「仕入税額控除」を適用するためには、雇われる側(以下、売り手とする)のインボイスの入手と保存が必要になります。

また、売手がインボイスを交付するためには、事前にインボイス発行事業者の登録を受ける必要があり、この登録を受けると、課税事業者として消費税の申告が必要です。

インボイスは、事業者が消費税を納めるために必要な制度となっています。ヘアメイクさんの中にはフリーランスとして活動している人も多いので、雇い主として制度について勉強しておく必要があるでしょう。

くわしくは、国税庁のホームページでご確認ください。

参考:国税庁「インボイス制度とは ~事業者の方が消費税を正確に納めていただくために必要な制度です~

ヘアメイクさんに長く働いてもらうためには

どの職種、業種においても、優秀な人材には長く働いてほしいものです。

しかしながら、少子化や人手不足の影響もあり、人材を確保した後の「離職を防ぐ」ことも課題となており、ヘアメイクさんを必要としている事業においても、この問題は深刻です。

特に、技術やセンスを併せ持つ優秀なヘアメイクさんを求めている同業他社は数多いため、雇い主としては長期的に定着させるための施策を考えなくてはなりません

ここからは、雇用したヘアメイクさんに長く勤めてもらうために、昨今人事の観点から注目されている「リテンション施策(Retention:保持、維持などを意味する)」を確認しておきましょう。

このリテンション施策は、採用後からではなく採用活動前から活用したり、すでに雇用している従業員に対しても活用することができます。例えば、あらかじめ考え方や企業の大切さを整えておくことで、採用した人材を育成していくときの基本的な考え方にも応用できますので、ぜひ取り入れてみてください。

離職を防ぐ対策をする必要性とは

離職率を減らす目的は、単に辞める人を減らすことではなく、「企業や現場に必要な人材を常に確保しておくこと」です。

まず、人材の雇用には、時間と費用がかかります。
例えば、正社員やアルバイトを雇用する場合、求人募集・面接・入社に際しての研修などに時間とお金が必要です。そのため、時間とお金をかけて働ける状態になった人に辞められてしまうと、また一からやり直しとなり、雇い主にとって大きなマイナスとなるでしょう。他の従業員にとっても、新しく入社する人と人間関係を再構築する必要が出てきます。

また、フリーランスを雇用する場合であっても、新規は適応するまで時間がかかることが予想されるため、自社と相性のよい人材がいれば継続的に依頼することが理想的です。

このように、雇い主は、優秀な人材の必要な人数と時間数を確保することで、事業を順調に進めることができたり、クライアントからの信頼を得やすくなり、次の仕事へとつながっていくでしょう。

しかしながら、少子化による人手不足のため、従業員の確保は非常に重要な課題となっています。特にヘアメイクさんは技術とセンスを融合し「その人にしかできない仕事」をするため、雇い主としては採用後の転職や引き抜きや転職もリスクとしてあげられるでしょう。このような事態を防ぐためには、普段からの離職を防ぐ対策と対処が欠かせません

離職理由と対処法とは

従業員が離職を選択する理由には「仕事内容が合わない」「人間関係がうまくいかない」「収入を増やしたい」などがあります。雇用したヘアメイクさんに長く努めてもらうためにも、これらの問題を解消できるような体制を整えていきましょう。

仕事内容が合わない

ヘアメイクさんの場合は専門的な技術職ですので、自ら希望して従事している人がほとんどですが、それでも「仕事内容が合わない」と感じることがあります。

ヘアメイクという仕事自体が合わないと感じた場合は継続が難しいかもしれません。しかし、ヘアメイクは好きだけれど、仕事内容に不満や希望がある場合であれば雇い主として対処可能です。

例えば、「メイクアップだけでなくヘアセットもしたい」「幅広いジャンルのヘアメイクをしたい」など、業務範囲内の希望であれば離職を防げるかもしれません。そのためには、選択肢を広げられる体制を整えたり、定期的に面談をおこない、従業員の意思を確認することが重要です。

人間関係がうまくいかない

多くの職種で、人間関係が原因で離職することは少なくありません。

とくにヘアメイクさんの場合は、クライアントやヘアメイクの対象者、そして一緒に仕事をするチームのスタッフなどと対面で接し、コミュニケーションをとることになります。そのため、直接接する人々との相性は、非常に重要なポイントとなるでしょう。

離職の理由として人間関係があげられた場合は、店舗の移動や現場のチーム編成の変更などで対応するしかありません。

しかし、裏を返せば、人間関係が良好であれば働きやすい環境となり、長く定着して働く理由にもなります。可能であれば、従業員同士の性格・価値観・能力などを定期的に把握し、店舗や現場のメンバー編成を調整することで、離職を防ぐことが可能です。

そして、相性のよいメンバーで構成することで、現場の効率化やクオリティの向上にもつながるでしょう。

収入を増やしたい

収入を増やすために、転職する場合もあります。

とくにヘアメイクさんのような技術職の場合は「技術や経験に見合った収入が得られるかどうが」が仕事へ従事するかどうかの判断ポイントとなるでしょう。

ヘアメイクさんを正社員・契約社員・アルバイトなどで雇用している場合には、定期的に技術力の評価や、それに見合った給与アップや手当の支給を検討しましょう。

また、フリーランスの場合は、依頼料が低いと断られる可能性があります。ヘアメイクさんの経歴や技術力に見合った報酬を支払うようにしましょう。

そのためには、業界・ジャンル・地域などの相場を知っておくことが大切です。

ヘアメイクさんにとって「働きやすい環境」とは

離職を防ぐための施策や対策を考える場合は、従業員全員を同じ施策に当てはめないようにしましょう。

例えば、ヘアメイクさんという職種であっても、ひとくくりにせず、ひとりひとりの経験・技術力・センス・目指したいキャリアを考慮することが大切です。

心理学の観点からも、人は、自分が希望するキャリアを実現できる可能性が高いほど、組織へのコミットメントが高まるとされています。

コミットメント(commitment)とは、関与・参加・責任という意味を持ち、「責任を持つ、自分から関わっていく」ということを表現するときに使われます。

そして、組織における「組織コミットメント」は、個々人が自身の所属する組織に対して持つ帰属意識のことを指します。これは、「ただ働く」のではなく、従業員が企業やチームの一員としての自覚と責任を持つことで、仕事に対してのパフォーマンスが上がったり、企業やチームへの愛着や貢献したい気持ちが上がるといわれています。

すべての従業員や業務委託先に対して、望むことをすべて叶えることは難しいかもしれません。しかし、意向に耳を傾け、コミュニケーションを取り、少しでも双方にとって働きやすく、働きたいと思ってもらえるような環境を実現することが理想的です。具体的には、以下のような取り組みが有効です。

ヘアメイクさんにとって働きやすい環境を提供し、長期的な雇用の実現を目指しましょう。

活躍してくれるヘアメイクさんを採用するためには

雇い主として、ヘアメイクさんに求めることは「自身の技術とセンスを持って活躍してくれること」です。優秀なヘアメイクさんと出会うために、ここからご紹介する3つのポイントと7つの記事を参考にしてみてください。

求人媒体にこだわる

ヘアメイクさんを雇いたい場合、求人媒体の選定は重要です。「どんなヘアメイクさんを求めているか」に応じて、適切な求人媒体を選びましょう。

以下は求人媒体の種類の一例です。

【求人媒体の一例】

求人媒体出会える人材・求める人材・媒体の特徴など
新卒採用サイト新卒生(未経験可)
転職者用サイト転職希望者、経験者を希望する場合
リファエル採用従業員や取引先などからの即戦力の紹介(自社の基準を満たしている者を求める場合)
ハローワーク公的な求人方法(既卒・新卒関係なく募集できる)
知人からの紹介縁故採用も含まれる(自社の基準を満たさなくてもよい場合)

以下の記事では、どの層に求人をかけるか、どんな人に応募してほしいかによって、求人媒体を使い分けるのが効果的かを解説しています。
→ヘアメイクさんを探す求人媒体の種類と選定方法とは?の記事は現在準備中です。

求人のタイミングはいつ?

採用活動には時間がかかります。
求人媒体の選定、面接、入社手続きに加え、戦力として稼働してもらうために研修が必要な場合も想定しておきましょう。

以下の記事では、ヘアメイクさんを雇うにはどれくらいの時間がかかるのか、ベストなタイミングはいつなのかを解説しています。

採用の流れ

採用活動をスムーズに進めるためには、事前に採用の流れを把握しておくことが重要です。トラブルを防ぐためにも役立ちます。

【採用までの流れ一例】

求人媒体を探す

募集をかける

書類審査をする

面接をする

採用通知を出す

入社の手続き

以下の記事では、ヘアメイクさんを雇うまでの採用の流れや採用方法を解説しています。

求人を出すときに企業が考慮すること

ヘアメイクさんを雇用したいときには、以下の3つの注意点を考慮することが重要です。
採用活動や雇用関係を結ぶ前に確認しておきましょう。

自社のために:「どんな人材がほしいのか」を明確にする

まずは企業にとってほしい人材像を明確にしましょう。
例えば、正社員か業務委託か、未経験可か経験重視かを決めるなど、自社が求める人材を明確にすることで、書類審査や面接の選考がしやすくなります。ブレることなくきちんと求める人材を採用することで、現場の仕事がスムーズに進行できるでしょう。

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従業員のために:勤務条件を明示する

勤務条件は、労働者が就業先を決定する際に非常に重要です。
基本的な給与・勤務地・仕事内容などの条件を明確にし、求人募集時に明記することで、労使で共通の認識を持つことができ、入社後のトラブルや不満を防ぐことにつながるでしょう。

以下の記事では、従業員と自社のために、ヘアメイクさんを採用するときの考慮点や注意点を解説しています。
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従業員と自社のために:採用にかかる時間と、採用後の収入(費用)を明示する

新しい人材の採用には費用と時間がかかります。
採用活動前に、企業にかかる負担や支出を明確にし、経営に支障が出ないようにしましょう。例えば、従業員にとっての収入となる「従業員に支払う給与」と、会社が負担する「見えない費用」を明確にしておく必要があります。

以下の記事では、求人から採用までヘアメイクを採用するときの費用を徹底解説しています。
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従業員と自社のために:受け入れ体制、働きやすい環境を整える

昨今、会社組織における福利厚生や技術手当、研修やハラスメント対策の体制を整え、充実させることが、一昔前に比べてより強く求められるようになってきました

従業員にとって働きやすい環境を整え、せっかく採用した人材が離れないようにすることが大切です。現場の仕事が円滑に進むように、労働環境づくりに取り組みましょう。

以下の記事では、従業員からもクライアントからも“選ばれる”ためのポイントを解説しています。
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ヘアメイクアップアーティストを雇用する際は多方面に考慮しよう

ヘアメイクアップアーティストを採用する際には、「なぜ採用したいのか」という目的と、「どんな人材を採用したいのか」という求める人材像を明確にし、適切な求人媒体と選考方法を選ぶことが成功の鍵となります。

そして、働きやすい環境を整えたり、長期的に定着してもらうための施策を用意するなどして、雇い主と従業員の双方にとってwin-winの関係を築くことが理想的です。

ヘアメイクさんを雇用する際は、一般の雇用する際の基礎知識を身に着け、法令遵守を徹底し、ヘアメイクさんのスキルや安心して働ける職場づくりを目指しましょう。